作業場・体育館での冷風扇・冷風機の使用は避けるべき

スポットエアコンの営業を行っていると、「冷風扇・冷風機が効かなかったから」という理由で「本物の」(ヒートポンプ式の)スポットエアコンが欲しいと言われることがよくあります。
結論から言うと、「日本の屋内、特に作業場、体育館で冷風扇・冷風機を使用するのは絶対に避けるべき」です。
「冷風扇」とは、水の気化熱を利用して、温度を下げた空気を送風する機械です。

冷風扇では、気化した水蒸気も一緒に送風するため、温度は下がりますが、湿度も上がります。
「冷風機」や「大型冷風機」も同様の原理を利用しています。「冷風扇」の評判が芳しくないのであえて商品名を変えて販売されているようです。
「エアコン」「スポットエアコン」も似たようなものだと勘違いされている方もいらっしゃると思いますが、全然違います。
エアコンやスポットエアコンは、「ヒートポンプ方式」が採用されており、水の気化熱は使いません。
室内機・室外機(または蒸発器・凝縮器)およびその間の銅管に冷媒がグルグル回っており、その冷媒が場所によって気体や半液体、液体に繰り返し相変化することを利用して冷房または暖房を行う仕組みがヒートポンプです。
アルミニウムと銅管で構成された熱交換器(冷房の場合、蒸発器となる)が物理的に冷たくなり、そこにファンで風を送るので空気の温度が下がるだけでなく、空気中の水分湿気が熱交換器に結露して、湿度も下がるのです。

暑さは、温度と湿度で決まります。

暑くて不快な状況を、不快指数と表現したりもします。
温度計で表示される温度と、実際の体感の暑さとは異なります。
湿度の状況を同時に考えないとならないからです。

熱には2種類あって、顕熱と潜熱があります。
顕熱はいわゆる通常の概念の熱で、温度計に表示される表に見える熱のことです。
表に見えるつまり顕在化した熱が顕熱です。
見えない熱として、水蒸気の状態で存在する熱が潜熱です。
つまり潜在的な熱が潜熱です。
この二つの組み合わせで基本的な暑さが決まります。


具体例ではサウナです。一般的なサウナは、「ドライサウナ」あるいは「高温サウナ」で、サウナ室内は室温が 80~100℃。湿度は10%程度になっています。
100℃のお湯を浴びれば火傷をしてしまいますが、人間は高温サウナの中に5分以上入ることができます。
高温サウナで火傷をしないのは、湿度が極めて低いために体から出る汗が蒸発する際に気化で熱を奪ってくれるからです。
サウナには乾式以外にミストサウナや蒸し風呂などの湿式のタイプもあります。
温度は40℃前後と比較的低い温度ですが、湿度は100%にもなります。湯気の中にいるような状態でドライサウナ以上に猛烈な汗が吹き出します。
入っていられる時間も5~10分程度。
室温はドライサウナよりかなり低温ですが、汗は数倍出てくる印象です。
このように温度が低くても湿度が高いと暑く感じることもあれば、湿度が低ければそれほど暑く感じられないという関係はご理解いただけたでしょう。

冷風扇・冷風機は加湿器 !!

さて、冷風扇・冷風機は、内部の水を含んだフィルターや格子にファンで風を当てて、水が気化することで冷風にします。
もうすでにお分かりのように、顕熱が下がった分だけ潜熱が増えます。エネルギー保存の法則ですね。
差し引きで下がった温度計ほどには体感で涼しくないのです。

冷風扇・冷風器の商品説明では「10℃以上冷たい風が出てくる」と宣伝文句にあったりしますが、それは室内の湿度が低い場合(おおむね40~50%程度に乾燥している時)の話で、梅雨時の70~90%くらいの多湿の際には気化量が減るので送風温度がほとんど下がりません。
部屋全体の湿度は上がり、蒸し暑さは解消されないどころかどんどん加速します。「キモチ悪い」という印象さえ抱いてしまう方もいます。
当然ですよね。暑いのに汗の気化冷却作用が全く作用しないので、熱が体内にこもってしまうのですから。
原理として「気化式の加湿器」とまったく同じであり、汗の気化冷却作用を先取りして気化冷却しているだけですので、湿度が上がって当然の結果です。

加湿器の風を浴びて涼むよりも、素直に扇風機やサーキュレーター方がよっぽど涼しいです。
なぜならば、送風で体表面の汗が蒸発し気化熱で直接体が冷えるからです。

冷風扇や冷風機は、極端に乾燥した中東やアメリカ西海岸では有力な冷却商品です。
砂漠や少雨気候の地域ならば重宝されることもあるでしょう。
でも、高温多湿の日本国内には向いていません。
百歩譲って屋外であれば湿気がこもらないのでまだマシです。炎天下では冷却効果もあります。
ただ、「日本の屋内で使用するのは絶対に避けるべき」です。
汗をかくことができずに熱中症になってしまう可能性が非常に高くなってしまいます。

「作業場や体育館のように天井の断熱が貧弱なところは特に避けるべき」です。
温度が上がるだけでなく、冷風扇や冷風機からの気化が促進され、その湿度の高い

状態でさらに屋上に当たった日射が貧弱な断熱を通過して熱貫流し、温度も湿度も高い状態、つまり熱中症が発生しやすい状態を生み出してしまいます。
冷風扇や冷風機がなければ温度は上がっても湿度が低い状態、すなわち上記のドライサウナの例のようにまだ耐えることが可能です。
それすらもできない状態になるので、「体育館や作業場で冷風扇・冷風機で冷却効果を狙うのは『自傷行為』に近い」と言っても過言ではありません。

夏は菌の繁殖に注意すべき!!

もう一つ衛生面で心配なことがあります。
気化式の場合は、フィルターや格子、および水のたまる場所の清掃しっかりしていないと、細菌が増殖するおそれがあるので要注意です。
強い送風により、エアロゾルになり、肺炎になるケースも起こってます。
また、水道水のカルキがフィルターや格子にくっついて目詰まりするので、ある意味消耗品の冷却機械です。
数年もてば良いレベルです。実際冷風扇・冷風機を導入してから2~3年後に「エアコンまたはスポットエアコンに変えたい」と言ってこられる方も多いです。
逆に言うと、冷風扇・冷風機を販売している業者はこのようなことが自明なのにもかかわらず、「冷えて気持ち良いですよ」とうそぶいて販売しているのです。
賢明なお客様は騙されてはいけません。

こんな冷風扇販売業者に気を付けて

とくに、冷風扇・冷風機とスポットエアコンを併売している業者には気を付けるべきです。彼らは「冷風扇・冷風機を販売した数年後に『冷えない』とお客様からクレームが入ることを見越してスポットエアコンを併売しているのです。このような業者からは冷風扇・冷風機は言うに及ばず、スポットエアコンも買うべきではありません。
彼らは他人の熱中症を食い物にしている悪徳業者です。
冷風扇・冷風機を販売するなら、どんな場面・どんな場所で有効なのかをしっかり説明して販売すべきです。
作業場や体育館など屋内活動者が汗をかくことが容易に想像できる場所で使用することが判っていて販売するのは犯罪的な行為だと考えられます。

屋内の熱中症対策はやっぱりエアコン

冷風扇・冷風機は、専門的知識のない施設担当者に「エアコンと同じような働きがあるもの」と誤認させて、販売しているようです。
冬にあまり暖房効果のない遠赤外線電気ストーブが売られるように、夏には冷風扇・冷風機の広告がやたらと多いです。
賢明なお客様は、冷風扇・冷風機を選択する場合は販売会社からよく説明を聞き、自分が使用したい場所で冷却効果が高いのか今一度検討してください。
筆者は、屋外は冷風扇・冷風機も可ですが、屋内はエアコンあるいはスポットエアコンしかないと考えています。

参考: https://www.organic-studio.jp/msking.columm/26568/
          https://frytiger.com/archives/4505.html