投稿日:2025.12.05
更新日:2025.12.10

イチゴの生産農家様にとって、夏場の気温上昇は深刻な課題の一つといえます。高品質なイチゴをできるだけ多く収穫するためには、生育環境の高温化を抑える対策が必要です。
とはいえ栽培ハウス内における高温対策にはさまざまな方法があり、課題も多いため、最適な対策がわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そのような方に向けて本記事では、栽培ハウスの温度抑制につながる具体的な対策について解説します。方法別にメリット・デメリットをお伝えするだけでなく、ハウス内の温度管理を効率化できるおすすめ製品も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

イチゴ栽培ハウス内において温度管理、高温対策は、非常に重要であり難しい課題です。
そもそもイチゴは、高温に弱い作物だからです。イチゴの生育適温は気温20〜25℃、地温18〜22℃といわれており、気温が30℃を超えると極端に生育が衰えます。
栽培方法や地域にもよりますが、イチゴ(冬春どり)の育苗は5月下旬から8月下旬にかけて行われます。子苗が育った後、9〜10月ごろに本圃への定植を行うケースが一般的です。
しかし、地球温暖化などによって夏〜秋ごろの気温が上昇している近年では、育苗ハウスや植え付けする本圃ハウス内の高温環境がイチゴの生育に悪影響を与えています。
この育苗時期(7から9月の猛暑期)における高温対策は極めて重要です。
具体的には、以下のような高温障害が発生する可能性があるでしょう。
高温による呼吸消耗などで充実した株ができず、収量が落ち込む
高温多湿のハウスでは、炭疽病などの病害やアザミウマ類などの害虫の増殖リスクが高まる。くわえてイチゴは抵抗力が低下し、免疫力が弱まるので、病害虫によるダメージを受けやすくなる
特に育苗期後半や第2花芽以降の分花期に、夜の高温(15℃以上)が続くと花芽分化が遅れたり着花しにくくなり、収穫時期の遅れや収量低下を招いてしまう
高温によって根の伸長が抑制された苗を植え付けると、培地にうまく根を張ることができず、しおれたり、株の充実が遅れる。ひどい場合は枯死してしまう。また、活着不良による生育ストレスは、芯止まり(しんどまり)や不時出蕾(ふじしゅつらい)などの生理障害の発生を助長する要因になる
高温でイチゴの生育が阻害され、株の中心にある生長点の活動が停止し、新しい葉や次に出るべき花房の発生が止まってしまう
イチゴが通常の開花期よりも早く花房を出してしまう。不時出蕾した花房に着果させても果実の大きさや味が劣ることが多く、品質や収量低下の原因となる
このように生育不良や病害虫リスク、花芽分化の遅れなどの高温障害は、収穫時期の遅れの要因となり、その後の収穫量や品質にも大きな影響を及ぼします。
したがって、健康な苗を育成し、その後の安定した収穫と品質を確保するためには、ハウス内の温度上昇を抑制する対策が必要となるのです。

イチゴ栽培を行うハウスは一般的に「ビニールハウス」と呼ばれますが、使われるフィルムには農ビ(ビニール)以外にも現在主流となっている農ポリ(ポリオレフィン系特殊フィルム)や耐久性に優れたフッ素フィルムなどがあります。
いずれも太陽からの日射(光)の透過性が高く、熱を外へ逃がしにくくする素材のため、栽培ハウスは熱がこもりやすい構造といえます。
そのため、主に以下のような高温対策が実施されています。
ここでは、各対策のメリット・デメリットを詳しく解説します。
ハウス内の温度を下げる対策の一つが、遮光・遮熱ネットの使用です。
ハウスの屋根面に遮光ネットを展張することで、太陽光の侵入を減少させ、温度上昇を抑制できます。ただし、太陽光を遮ることで徒長気味になりやすいといったデメリットもあります。徒長防止のために晴天日に遮光し、曇天や雨天日にはネットを開けることが望ましいとされており、業務負担が増えてしまうことも懸念点といえるでしょう。
遮熱ネットは太陽光に含まれる赤外線を吸収するのが特徴です。ハウス内の温度上昇を抑制しつつ、光合成に必要な光線は通すため、遮光ネットと比較して光合成量の低下は少ないといわれています。ただし、遮熱ネットは一般的に高価な資材であるため、導入コストがかかりやすい点がデメリットです。
換気機能を強化することもハウス内の温度上昇を抑制する対策の一つです。
具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
| 概要 | メリット | デメリット | |
| 肩換気 | ハウス上部の肩面にビニペットを設置し、開口部を設ける方法 | 側面の換気より上部の温かい空気を効率的に排出できる | ・降雨時などにビニペットから水滴が落ちる・ハウスの強度が低下する |
| 循環扇・扇風機 | ハウス内上部に循環扇や扇風機を設置する方法 | ハウス上部の熱せられた空気を外へ強制的に排出できる | 設備代や電気代がかかる |
| 妻面による換気 | 妻面のビニールを除去する方法 | 妻面からも風が抜けるため、室内の温度上昇を抑制できる | ・ハウスの強度が低下する・台風や強風時には閉める必要がある |
ビニールハウスの場合は肩面や妻側のビニールを除去し、熱せられた空気の逃げ道を作ることで室内の温度上昇抑制が可能です。ただし、ビニールハウスを部分的に開放することで外からアザミウマ類やハダニといった害虫が侵入しやすくなります。また、雨水の影響をうけやすくなったり、ハウスの強度が下がったりするなどのデメリットもあります。
その点、循環扇や扇風機を設置する方法は、ビニールハウスの強度低下を抑えながら、熱せられた空気を外へ強制的に排出できるのがメリットです。
フルオープンハウスとは、ビニールハウスの側面と天井部の両方のビニールを巻き上げて開け放つことができる栽培施設を意味します。天井部を固定し、上部に展張している資材を巻き上げて使用するのが一般的であり、主にウォーター夜冷(=内張りカーテンや屋根などに冷水を散水ノズルで流すウォーターカーテン冷却)で使用されます。
換気性能が高いフルオープンハウスを活用することで、夏場のハウス内の温度上昇を効率的に抑えられる点がメリットです。ただし、開放部が多い分、肩換気や妻面による換気よりも強風に弱いという点とハウス設備の購入費が掛かるというデメリットがあります。
気化熱を利用したハウス高温対策には、主に以下のものがあります。
高圧ポンプや特殊なノズルを使って、水を微細な霧(ミスト)としてハウス内に噴霧します。非常に小さな水滴が空気中で速やかに蒸発する際、周囲の熱を奪って冷却効果を発揮します。
ハウスの屋根面(外側)に水を散水チューブなどで流し、水の蒸発によって屋根材の表面温度を下げる方法です。屋根材の温度上昇を抑えることで、ハウス内への熱の侵入(放射熱)を減らし、間接的に室温の上昇を抑制します。
しかし、細霧冷房ではハウス内の湿度が高くなりすぎることがあります。イチゴの主要な病害である炭疽病や灰色かび病などは多湿を好むため、かえって発生リスクが増してしまうというデメリットがあります。外気の湿度が高い日には水の蒸発が進みにくいため、冷却効果が低下します。また、水の蒸発を利用するため、十分な水量の確保も必要です。
気化熱を利用した冷却は、遮光・遮熱や換気などの基本的な高温対策と組み合わせて行うことで、より効果を発揮します。

イチゴ栽培ハウス内の高温対策の重要性と主な対策を前述しましたが、近年では猛暑日が年々増え続けています。
外気温が35℃を超えると、閉鎖的なハウス内は50℃近くにまで達することがあります。イチゴの生育適温(気温20〜25℃、地温18〜22℃)を大きく上回ってしまう環境では対策も困難です。
また、遮光で太陽光を遮ると光合成に必要な光が不足したり、細霧冷房などの気化熱冷却による対策は多湿な環境をつくり病害虫の発生リスクが高まってしまいます。
日本農業新聞にも「需要期にイチゴが品薄 安定供給が課題」という記事が1面トップ記事として掲載されています。

需要期に品薄 安定供給が課題
Xマスケーキ「イチゴなし」も
出典:日本農業新聞2025.11.18付 全国版1面トップ
イチゴ栽培ハウスの高温対策は課題も多く一筋縄ではいきません。ハウスの高温対策として遮光・遮熱、換気、気化熱利用といった対策は、いずれもメリット・デメリットがあります。すでにこのような対策を行っているけれど、思うような効果が得られていなかったり、ハウス内の空調環境についてお困りであれば、株式会社イーズが提供するハウス栽培用ヒートポンプ「ぐっぴーバズーカ EX(別置型)」の導入をご検討ください。

ぐっぴーバズーカ EXの特徴は、優れた冷暖房能力と除湿性能です。熱交換器の搭載量を従来機(バズーカシングル)の倍にすることで3倍の除湿量を実現。吸込温度と吹出温度の差が大きく、暖房運転ではより暖かい風を、冷房ではより冷たい風を効率的に供給可能です。
さらに、70㎥/minの大風量を発生させられる定格7馬力(最大8.5馬力)のパワーを備えており、1台の室内ユニットでBZツイン(2ユニット)に匹敵する冷暖房能力を発揮。
ハウス内に隈なく風を行き届かせて、温度ムラを軽減します。
そのうえ、暖房定格COP 4.80 (JIS条件)、冷房定格COP 3.70 (JIS条件)を満たす業界トップクラスの省エネ性能を実現。
少ない台数で中〜大型ハウスの温度管理ができるため、導入コストだけでなく、ランニングコストも抑えられます。
優れた除湿能力でイチゴにとって最適な生育環境を維持できます。夏は冷房で高温対策、冬は暖房で重油削減に貢献。通年で活躍します。
ハウス内の温度管理を効率的に行いたい方はもちろん、設備導入に伴う手間やコストをできるだけ節約したい農家様にとっても有用性の高い設備といえるでしょう。
ぐっぴーバズーカ EX(別置型)のスペックを確認したい方や、導入を検討している方は、以下のページをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。
ぐっぴーバズーカ EX(別置型)に関するお問い合わせはこちら
千葉市でイチゴ狩りのできる観光いちご農園を運営する「ワイズアグリ合同会社」様は、500㎡と180㎡のハウスにぐっぴーバズーカEXを導入した結果、定植時期を1週間ほど早めることに成功しました。
導入時には、環境負荷低減と生産性の向上を目的とする千葉市の補助金を活用しました。
育苗用の180㎡ハウスにバズーカEXを導入し、8月中旬から簡易夜冷処理に活用したところ、冷房と短日処理で花芽分化が促成され、定植時期が早まったそうです。定植時期の早期化によって、例年よりも多くのイチゴを収穫できる見込みと喜ばれています。
また、導入した500㎡のハウスでは、暖房機だけのハウスに比べて重油暖房機の運転時間を57時間ほど削減できたとのこと。電気代もそれほど高くはなかったと語られており、確かな費用対効果を実感いただけているようです。
高品質なイチゴをより多く収穫するためには、ハウス内の高温対策、特に夜間の温度管理は重要です。
イチゴは短日(日照時間が短いこと)かつ低温(夜温が低いこと)の環境条件が揃うと、葉やランナーではなく果実をつけるための花芽分化を始めます。
特に温暖化によって年々気温が上昇しつつある近年、この花芽分化を高温長日である夏場(8月中旬~9月上旬頃)にいかにスムーズに行うことができるかがポイントとなります。
イチゴが市場に出回る量が少なく、高い単価で出荷できるクリスマス需要に向けて、早期に収穫を開始する「促成栽培」や10月出荷を目指す「超促成栽培」も注目されています。
遮光・遮熱、夜冷などで人為的に短日低温環境をつくり、イチゴに冬が来たと錯覚させます。本来の季節よりも早く花を咲かせ、実をつけ始めるようになるので収穫を早めることができます。
高温対策によって夏を乗り切った丈夫な株で早期の収穫が実現できれば、収穫時期も長くなり収量もアップします。

イチゴ栽培において、ビニールハウス内の高温対策は必須といえます。特に、温暖化によって年々気温が上昇しつつある近年では、ハウス内の温度上昇を抑制することがイチゴの収穫量や品質向上の鍵を握るといっても過言ではないでしょう。
ビニールハウスの高温対策としては、ハウスの肩面や妻側のビニールを開放して換気性能を高めたり、遮光・遮熱ネットを展張したりなどさまざまな方法があります。いずれもメリット・デメリットがあるため、自社の環境や栽培方法を踏まえたうえで最適な対策を実施しましょう。
なお、中〜大型ビニールハウス内の高温対策を効率的に行いたい場合は、本記事でご紹介した業務用大型スポットエアコン「ぐっぴーバズーカ EX(別置型)」がおすすめです。製品の詳細について確認したい方は、「株式会社イーズ」まで気軽にお問い合わせください。
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